医師の平均年収ランキング【年代・診療科・地域・経営母体別】

医師の年収は年代、診療科目、経営母体、地域によって異なります。勤務内容や勤務日数も千差万別のため、実態を把握するのは難しいものです。
この記事では、厚生労働省の調査結果や民間医局の過去転職者のデータをもとに、勤務医の平均年収をランキング化しました。ご自身の年収と比較してどうか、参考値としてご覧ください。

医師の平均年収は1,428.8万円

まずは厚生労働省が公表している、「令和4年賃金構造基本統計調査」で医師の平均年収を確認します。この調査は「賃金センサス」と呼ばれ、毎年実施されています。雇用される労働者に対し、その賃金の実態を雇用形態、職種、性別、年齢、勤続年数、経験年数などで分析したものです。

企業規模10人以上のデータから、直近の勤務医の平均年収の推移を見てみましょう。


調査年度男女計男性女性
令和4年1,428.8万円
(44.1歳、6.2年)
1,514.8万円
(45.6歳、6.6年)
1,138.3万円
(39.1歳、4.7年)
令和3年1,378.3万円
(45.3歳、7.7年)
1,469.9万円
(46.8歳、8.0年)
1,053.7万円
(39.9歳、6.4年)
令和2年1,440.3万円
(45.5歳、7.1年)
1,522.5万円
(47.2歳、7.9年)
1,188.3万円
(40.6歳、5.0年)
令和元年1,169.2万円
(40.7歳、5.2年)
1,226.9万円
(41.6歳、5.5年)
1,016.4万円
(38.2歳、4.4年)

参照:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとに作成

  • ()内の年齢は平均年齢、年数は勤続年数
  • 平均年収額は、きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額で算出

医師に限ったことではありませんが、男性に比べると女性の年収は低い結果となっています。
本来、勤務先(所属先)、年齢、勤続年数、役職、診療科、働き方が同じなら、給与に男女差はないはずです。労働基準法第4条で、「男女同一賃金の原則」が定められています。

それでも年収に男女差が生じる理由として、以下が考えられます。


  • 女性医師の平均年齢が男性医師より6.5歳低い
  • 女性医師の割合は年々増加しているが、男性医師の数そのものが多く、その分給与の高い要職に就く男性医師も多い
  • 子育てや介護などで時短勤務中の医師の割合が、女性医師の方が多い

民間医局を利用して転職した医師の平均年収は?

次に、2019年1月~2022年2月までの民間医局を利用して転職した医師のデータから、採用決定時の想定年収で平均値、中央値を見てみます。

この想定年収とは、採用決定時に明示された月額給与(算定可能な諸手当を含む)の12ヶ月分と、想定賞与を含んだ額です。変動する手当、外勤アルバイト代などは含まれていません。


年収の平均値、中央値とは


  • 平均値:すべての年収の値の合計をデータの数で割った値
  • 中央値:データを昇順もしくは降順に並べたときに、ちょうど中央に位置する値

「平均値」は、特殊な理由などによる極端に離れた値の影響を受けるため、実際の感覚からはズレる場合があります。
これに比べ、「中央値」は極端に離れた値の影響を受けづらく、現場の実態に即したリアルな年収を把握しやすい数値となります。

今回は民間医局が保有する全国の医師求人情報と、過去の転職データから算出した「中央値」をベースに、勤務医の年収について解説していきます。


民間医局を利用して転職した医師の平均年収


年収中央値年収平均値
男女合計(平均年齢46.5歳)1,403万円1,425万円
男性(平均年齢48.5歳)1,500万円1,504万円
女性(平均年齢42.0歳)1,200万円1,252万円

年収中央値は1,403万円、平均値は1,425万円でした。
男女合計、男女別で見ても、中央値と平均値に大きな差はありません。

年収は採用側に直接言いづらいものですが、転職エージェントが間に入ることで、交渉しやすくなります。
「自分の現収は勤務内容に見合っているのか」といったご質問も、エージェントにお気軽にお問い合わせください。


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年代別×男女別の年収とキャリアの関係性

民間医局を利用して転職した医師のデータから、年代別・男女別による年収の中央値を見ていきましょう。ご自身の年代・性別の年収と比較してみてください。


年代男女合計男性のみ女性のみ
25~29歳980万円1,044万円900万円
30~34歳1,170万円1,200万円1,100万円
35~39歳1,350万円1,440万円1,200万円
40~44歳1,440万円1,500万円1,265万円
45~49歳1,500万円1,550万円1,375万円
50~54歳1,600万円1,650万円1,418万円
55~59歳1,601万円1,650万円1,400万円
60~64歳1,582万円1,647万円1,440万円
65~69歳1,400万円1,400万円1,310万円
70~74歳1,200万円1,200万円1,150万円

参照:民間医局の常勤成約実績

30代前半までは男女ともに年収は低く、50代にピークを迎えることがわかります。

年収は経験年数が大いに影響するものです。ここからは年代別のキャリアと年収について解説していきます。


20代(~卒後5年目)

医学部を最短で卒業するのが24歳。
初期臨床研修を修了するのが26歳。

その後、多くの医師が専攻医となり、3~5年間の専門研修プログラムを経て、最短で専門医資格を取得できるのが29歳となります。

医師の20代は研修医や専攻医、さらに学位取得など、医師として“学ぶ”期間でもあるため、年収相場は低くなっています。

専攻医の年収額の目安は、下記の記事で解説しています。参考にしてください。


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専攻医の年収は?年収を増やす方法やアルバイトをする際の注意点も紹介


30代(卒後5年~15年目前後)

30代に突入すると年収は大きく増加し、男女ともに1,000万円を越えてきます。
男性医師の年収中央値は30代前半で1,200万円、後半で1,440万円。女性医師は30代前半で1,100万円、後半で1,200万円となります。

30代は多くの医師が専門医資格を取得しており、さらにサブスペシャルティ領域などの資格も活かしながら、現場の第一線で活躍する年代です。体力的にも充実し当直や残業も増え、医療機関にとっては大きな“戦力”となります。その分、年収は上がりやすくなります。


40代(卒後15~25年目前後)

男性医師の年収中央値は40代前半で1,500万円、後半で1,550万円。女性医師は40代前半で1,265万円、後半で1,375万円です。

男性医師の中央値が40代前半と後半で50万円しか増加していないのに対して、女性医師は110万円と大きく増加しています。理由として、40代後半になると子どもの高校・大学進学などで子育てが一段落し、フルタイムで勤務する女性医師が増えてきたことによるものと考えられます。

30代は臨床現場での活躍が主ですが、40代は組織のまとめ役など、責任のある立場に就く年代です。
所属先が大学病院(医局)であるならば講師や准教授、関連病院の部長、さらに40代で教授に就任する医師もいますし、市中病院では医長、部長といったポジションが与えられます。管理職や人材育成・教育を任されるようになり、年収も増加していきます。


50代(卒後25~35年目前後)

男性医師の年収中央値は50代前半・後半とも1,650万円。女性医師は50代前半で1,418万円、後半で1,400万円です。男女合せた中央値が1,600万円と、勤務医では50代が最も年収の高い時期となります。

この年代は臨床では経験豊富なベテラン医師として活躍しており、さらに多くの医師が何らかの役職に就いています。医局所属では教授、市中病院では副院長や院長といった病院経営に携わる立場にもなります。
50代は役職のなかでも院長や教授など上位に占める割合も多くなり、年収もピークを迎えます。


60代(卒後35年目~)

60歳を過ぎると勤務医の年収は下降していきます。
男性医師の年収中央値は60代前半で1,647万円、後半で1,400万円。女性医師は60代前半で1,440万円、後半で1,310万円となり、60代後半になると男女共に年収は大きく下がっていきます。

50代後半から当直やオンコール勤務が体力的にも厳しくなり、勤務時間が減少。そして勤務医として最後のターニングポイントとなる定年を迎えます。

国立病院機構は医師の定年を65歳に定めています。民間病院の場合は定年制度を廃止している病院もありますが、いずれにしても役職がなくなるケースが多いでしょう。

定年後の再雇用による年収ダウンや、介護老人保健施設や療養型病院への転職などによって年収は下降していきます。

それでも、70代でも男女共に年収中央値1,000万円以上をキープできるのは、一般の職種と比べて医師の希少性の高さを物語っています。


診療科別の年収ランキング

一般的に内科系よりも外科系の方が、給与水準が高いと言われています。診療科の違いによっても年収の差があるのかを見ていきます。


順位科目年収中央値
1外科系1,650万円
2内科系1,403万円
3他科系1,356万円

参照:民間医局の常勤成約実績

やはり外科系の年収中央値が最も高く、内科系と比較して約250万円もの差がありました。内科系と外科系の年収の差は、「働き方の違い」や「働く時間の長さ」が主な要因です。

他科系の年収中央値は、内科系より50万円ほど低い結果となっています。

外科系、内科系、他科系それぞれの年収について、解説していきます。


外科系の主な診療科別年収


順位科目年収中央値
1美容外科2,200万円
2血管外科1,791万円
3整形外科1,758万円
4外科1,688万円
5心臓血管外科1,635万円
6消化器外科1,620万円
7脳神経外科、呼吸器外科1,600万円
9小児外科1,500万円
10乳腺/内分泌外科1,320万円
11形成外科1,300万円

参照:民間医局の常勤成約実績

「美容外科」は自由診療であり、医師一人ひとりの実績が直接給与に反映されやすく、年収の中央値が2,200万円と他の外科系と比較しても群を抜いて高くなっています。

こうした特殊な事情のある「美容外科」を除いたとしても、外科系の年収は内科系よりも250万円ほど高い結果となっています。
その要因として、外科系は緊急手術など命に直接関わる場面が多く、

  • 内科系と比べて緊急性が高いことが多い(オンコール勤務が多い)
  • がん手術、移植手術といった長時間の手術がある
  • 術後管理も担う

など、長時間勤務になりやすい特徴があります。

このように外科系は「勤務時間が長くなる」「働き方が不規則になりがち」で、かつ、手術には高度な専門性・技術が求められることから、年収は高めとなっています。

さらに日本では外科医の数そのものが少なく、外科医の需要が高いです。


内科系の主な診療科別年収


順位科目年収中央値
1循環器内科1,601万円
2透析科1,600万円
3呼吸器内科1,573万円
4腫瘍内科1,550万円
5内科、訪問診療1,500万円
7神経内科1,472万円
8消化器内科1,400万円
9血液内科1,397万円
10総合診療科1,351万円
11糖尿病科1,320万円
12腎臓科1,265万円
13健康診断1,100万円

参照:民間医局の常勤成約実績

内科系の求人は無床クリニックで外来や検査中心の診療科も多く含まれます。それらは当直がありません。
緊急手術などのある外科系と比べれば労働時間が短いケースが多いため、年収は外科系よりも低い傾向にあります。

内科系のなかでも「循環器内科」の年収が高いのは、急性心筋梗塞といった救急患者に対するカテーテル治療など、24時間体制で緊急処置を行うことが多い診療科だからです。

「透析科」も内科系のなかでは年収が高めです。超高齢化社会により人工透析を受ける患者は増加しています。また人工透析は長期にわたる治療となるため、安定的な診療報酬が望めます。人工透析を専門とする医師の数も少ないことから、年収相場が高めとなっています。

「呼吸器内科」「腫瘍内科」が高いのも、超高齢化社会による呼吸器系の慢性疾患や肺炎などの急性疾患、がんの罹患数の増加など、全国的に高需要なことが要因であると推測されます。

近年は在宅医療のニーズが高まっていることから、「訪問診療」を行うクリニックの求人数も増えています。「訪問診療」の年収は内科系の中央値である1,403万円より約100万円高い、1,500万円という結果になっています。

「健康診断」の年収が内科系のなかで最も低いのは、当直や残業がほぼなく、時短勤務や週3~4日勤務も可能など、他科と比べて労働時間が短いためです。その分、ゆったりとした働き方が実現しやすいと言えます。


他科系の主な診療科別年収

今回の調査で他科系に含まれる診療科は、以下の通りです。

美容皮膚科、肛門科、リハビリテーション科、救命救急科、緩和ケア科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、産婦人科、眼科、婦人科、精神科、皮膚科、麻酔科、感染症科、小児科、産業医、放射線科


順位科目年収中央値
1美容皮膚科2,000万円
2肛門科1,800万円
3リハビリテーション科1,620万円
4救命救急科1,521万円
5緩和ケア科、泌尿器科、耳鼻咽喉科1,500万円
8産婦人科1,470万円
9眼科1,380万円
10婦人科1,370万円
11精神科1,353万円
12皮膚科、麻酔科、感染症科1,300万円
15小児科1,236万円
16産業医、放射線科1,200万円

参照:民間医局の常勤成約実績

「美容皮膚科」の年収が群を抜いて高いのは「美容外科」と同じく、自由診療という特殊な要因によるものです。

「肛門科」の年収が高い理由は、大腸内視鏡検査や外科的処置など診療単価が高く、かつ、若い人から高齢者まで患者数が多いことが挙げられます。

「泌尿器科」「耳鼻咽喉科」は前立腺がん、頭頚部がんといった高度な外科治療も行うため他科系のなかでも年収は高くなっています。

「リハビリテーション科」「救命救急科」「緩和ケア科」などの診療科も年収は高めです。

一方で、「皮膚科」「眼科」「麻酔科」「婦人科」は女性医師の比率が高く、出産・子育てなどによる時短勤務など、ワークライフバランスに重点を置いて勤務している医師が多い傾向が考えられます。


勤務地別の年収ランキング

勤務医の年収は一般的な会社員とは逆で、「地方に行けば年収が高くなり、都市部では年収が低くなる」と言われています。実際のところはどうでしょうか?

勤務地別の医師の年収中央値ランキング

参照:民間医局の常勤成約実績

ランキングを見ると、東京都(1,396万円)大阪府(1,401万円)といった大都市に比べ、山口県(1,800万円)、北海道(1,700万円)、高知県(1,696万円)といった地方の方が年収が高い結果となっています。

北海道の年収相場が高めと言われているのは、札幌市周辺に道内の医師のほとんどが集中しており、なおかつ北海道は面積が広く、医師偏在によってそれだけ医師不足が問題となっている地域が非常に多いためです。


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北海道の医師転職市場や年収相場は?

都心だからといって必ずしも年収相場が低いということではありません。医師の年収は勤務内容や経験年数によっても大きく変動します。このランキングで下位となった都道府県でも、高額給与の求人はいくつもあります。


都市部と地方の年収の差について

地域による医師の平均年収の差は、「地方に行けば年収が高くなり、都市部では年収が低くなる」のではなく、「医師が不足している地域では、年収が高くなりやすい」という方が正確でしょう。

東京都にも離島やへき地があるように、都市部であっても医師偏在があり、医師数の少ない地域や医療機関が存在します。

医師不足が深刻な地域や医療機関では、医師を確保するために給与水準を高く設定する必要があり、若い医師であっても高額の年収が期待できます。
加えて、地方(特にへき地や離島)は家賃などが安く、出費も少なくてすみます。貯蓄がしやすいことは大きなメリットです。

一方、都心や都市部は地方と比べて医師数は圧倒的に多いですし、医療機関も充実しています。比例して求人数が多いことから、自分に合った転職先を見つけやすいでしょう。医療機関にとっては、年収が低めでも人材確保がしやすいという特徴があり、都市部は地方と比べて高い年収を得にくい傾向にあります。

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