屋根の劣化や損傷を放置すると、雨漏りが起こったり建材が濡れて腐ったりなどのトラブルに発展することがあるため、きちんと修理・メンテナンスする必要があります。
しかし、修理・メンテナンスのタイミングがわからないために、放置してしまっている方も多いのではないでしょうか。また、どれくらいの費用がかかるか見当がつかず、修理やリフォームをためらっている方もいるかもしれません。そこで、屋根修理・メンテナンスのタイミングや費用の目安、業者の選び方などについて解説します。
記事の目次
1. 屋根材ごとの屋根修理・メンテナンスのタイミングは?
2. 屋根の修理・リフォームにかかる費用相場はいくら?
3. 火災保険で屋根修理が無料になる?
4. 屋根修理に使える補助金・助成金
5. 屋根修理、工事業者の探し方・選び方
6. 【Q&A】屋根修理に関するよくある質問
屋根材ごとの屋根修理・メンテナンスのタイミングは?
雨漏りなどの直接的な被害がある場合以外に、屋根の修理やメンテナンスがぜひとも必要だと感じる機会はあまりありません。しかし、目に見えない部分だからと放置せず、適切なタイミングで不具合がないか確認し、必要に応じて修理やメンテナンスをすることも大切です。
家全体のリフォームを築10年から15年のタイミングで考える人が多く、屋根もその時にほかの部分とあわせて点検をし、必要に応じて修理やリフォームを行うのが一般的です。屋根と外壁のリフォームは同時に行うことで、その都度足場を組む必要がなくなるため、費用も抑えられます。屋根に使われている素材は大きく分けて、瓦、スレート、金属という3種類がありますが、素材によってメンテナンスが必要になるタイミングも異なります。
屋根の耐用年数と塗装などのメンテナンス時期
屋根の素材 | 素材の耐用年数 | 屋根のメンテナンス時期 |
---|---|---|
スレート (セメント瓦含む) | 15~20年 | 10年 |
瓦 (素焼き・粘土、陶器) | 50年以上 | 10~15年 |
金属 (ガルバリウム鋼鈑) | 20~40年 | 20~30年 |
※スレート、セメント瓦、金属(ガルバリウム鋼板)のメンテナンス:塗装
※瓦(素焼き・粘土、陶器)のメンテナンス:瓦の状態を確認し、異常個所を対処。主にズレを直したり、割れ・欠けがあれば交換する
瓦屋根
(画像/PIXTA)
スレート屋根
(画像/PIXTA)
金属屋根
(画像/PIXTA)
屋根材ごとの耐用年数やメンテナンス時期について、下記にてよりくわしく解説しています。
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屋根や屋根材の種類を徹底比較!屋根材や形状別の特徴を解説
スレート屋根は10~15年
住宅の屋根で最もよく使われるスレートは、割れたり反ったりすることがあります。雨風、紫外線、温度差で、表層部が傷みます。そのため、概ね10年で再塗装が必要です。スレート屋根の耐用年数は15~20年前後ですが、10年のタイミングでの修理・メンテナンスを検討しましょう。
瓦屋根は10~15年
素焼き瓦や粘土瓦、陶器瓦の屋根の耐用年数は50年以上と長く、強い衝撃を受けるなどのトラブルがなければ半永久的に長持ちします。
しかし、瓦の場合、10~15年位のタイミングで、目視による検査をしましょう。素焼き瓦ではコケが発生することがあります。地震などで動いたり、ずれたりということもあるので、修正が必要になることがあります。セメント瓦やモニエル瓦などはスレートと同様に、10~15年に1回のスパンで塗装が必要となります。
ガルバリウム鋼板屋根は20~30年
ガルバリウム鋼板屋根の耐用年数は20~40年前後です。金属屋根は耐久性が高く、壊れる心配もあまりないため、20~30年前後を目安に再塗装のメンテナンスするのがおすすめです。
屋根の修理・リフォームにかかる費用相場はいくら?
屋根修理やリフォームにかかる費用は、作業内容によって大きく異なります。どれくらいの費用がかかるのか、作業内容別の費用の目安を紹介します。
状況によって必要になる足場代
屋根の修理では、急こう配の場合、作業のために足場を組む必要があります。
延床面積30坪(約99平米)程度の2階建ての家で勾配のある屋根の場合、リフォームの際に組む足場の面積は250~400平米くらいになります。外周の足場と屋根面の足場になります。管理費、消費税も含めて30~40万になります。
このような足場代に加えて、屋根の修理自体の費用が発生します。屋根の劣化や損傷の状態によって修理内容や費用は異なるので、修理方法や内容ごとに費用の目安を知っておきましょう。
※記事内の費用の目安は参考値。足場代は含まない。費用は施工面積や使用する材料などによって異なる
※文中の「1棟当たり」は30坪程度の2階建てを想定
塗装(費用目安:1棟当たり30~70万円(管理費、消費税も含め)
(画像/PIXTA)
屋根材の塗料の劣化は屋根材自体の劣化にもつながるため、塗装は屋根のメンテナンスとして有効な方法です。高圧洗浄をして汚れなどを落とした後、下塗り、中塗り、上塗りと3回塗装を行います。
スレートや金属屋根はもちろんですが、瓦の場合でもセメント瓦は塗装を行う必要があります。
葺き替え(費用目安:1棟当たり100~170万円)
(画像/PIXTA)
全面的な屋根のリフォームとして、既存の屋根材を撤去して新しい屋根材に取り替えることを葺き替えといいます。葺き替えは、防水材や野地板という下地も同時に更新できる一方で、古い屋根材、板材などの処分費用なども発生します。
瓦からガルバリウム鋼鈑などの金属の屋根に葺き替える場合は、既存の雨樋の交換が行われる。雨樋の交換費用もかかります。
費用は葺き替える屋根の素材によっても左右されるため、例えばスレート屋根に葺き替える場合よりも、ガルバリウム鋼鈑などの金属屋根や陶器瓦に葺き替える場合の方がコストはかかります。
なお、既存の屋根がスレートや金属などの軽い素材の場合は、重量がある陶器瓦に葺き替えると建物に大きな荷重がかかるため、耐力壁量の計算が変わるので陶器瓦に葺き替えることはできません。
カバー工法(費用目安:1棟当たり80~150万円)
葺き替えのほかに、全面的な屋根リフォームのもうひとつの方法として、既存の屋根材の上に防水材を被せて新しい金属屋根材を重ねて施工する、カバー工法(重ね葺き)があります。
瓦の場合は葺き替えになりますが、スレートや金属屋根の場合は葺き替えではなく、カバー工法が主流です。カバー工法の場合は既存の屋根材を処分する費用がかからない分、コストが抑えられます。
既存の屋根に新しい屋根を重ねるカバー工法は、屋根部分の荷重が大きくなるため、家の構造によっては選択できない場合もあります。積雪が多い寒冷地などの場合はとくに、既存の建物の状態がカバー工法に適したものであるか、リフォーム会社に確認をしてもらうようにしましょう。
部分補修
前述した葺き替えやカバー工法、塗装などは屋根全体のリフォームになりますが、不具合のある箇所を部分的に補修することもあります。よく行われる部分補修の例と費用目安は以下のとおりです。費用目安に幅がありますが、補修の大小や補修箇所の状況によって金額は異なります。
瓦部分補修(費用目安:仮に1人工として4万円程度)
一部の瓦が壊れるなどした場合、壊れた瓦を新しい瓦に取り替えます。壊れた瓦が1枚でも、周囲の5~10枚程度を一度外して交換を行うそうです。
(画像/PIXTA)
板金交換、貫板(費用目安:1人工として4万円程度)
屋根材を固定している金属が板金です。浮いていると雨漏りの原因になります。
(画像/PIXTA)
漆喰補修(費用目安:1人工(※)として4万円程度)
漆喰は瓦より耐用年数が短いため、漆喰が劣化し剥れ落ちると、瓦の落下や雨漏りの心配もあります。また、費用については補修範囲が短いほど割高になる傾向があるそうです。
※一人工とは
住宅の新築やリフォーム工事について、大工(職)や塗装工(職)などの一人の専門職が、「1日がかりで完了する作業量」のこと。「いちにんく」と読む。
(画像/PIXTA)
雨樋交換(費用目安:角樋の場合1m当たり4100~4800円。そのほか金具・部品費用等が加算)
屋根に落ちた雨水を下に流す雨樋が壊れると、家の外壁などに雨水が浸水し、汚します。
(画像/PIXTA)
部分補修の場合でも、はしごや脚立では安全に作業ができない場合には補修規模の大小にかかわらず足場を組む必要があるため、修理費用には足場代が加算されることも覚えておきましょう。
火災保険で屋根修理が無料になる?
修理の規模や内容によっては、費用が高額になることもある屋根のリフォームですが、経年劣化ではなく、風雪や豪雨などの自然災害で修理が必要になった場合には、火災保険の補償内容の範囲内で修理やリフォームを行うことができます。
火災保険は火災の場合だけでなく、契約の範囲内で自然災害による損傷などでも申請が可能です。屋根の修理の際に申請すれば、火災保険が適用される場合があります。
ただし、火災保険の申請には、いつ、どのような災害で被災したのかを明確にした上での修繕の見積もりが必要になりますが、一般的なリフォーム会社の修繕の見積もりを保険会社におくり、保険適用を確認してから、修繕工事を行う。
保険の窓口でまず保険の適用範囲を確認し、手続きの流れに従って火災保険を活用すれば、修理費用を保険でまかなえます。
経年劣化の場合は適用されないが、自然災害による損傷であれば火災保険を申請することで、屋根の修理費用を保険でまかなえることもある(画像/PIXTA)
屋根修理に使える補助金・助成金
国や地方公共団体が、以下のようなさまざまな住宅リフォームの補助制度を用意しています。
【国の補助制度】
・住宅エコリフォーム推進事業
・長期優良住宅化リフォーム推進事業
・既存住宅における断熱リフォーム支援事業
・住宅省エネ2024キャンペーン
・次世代省エネ建材の実証支援事業
・介護保険法にもとづく住宅改修費の支給
・子育て支援型共同住宅推進事業 など
【地方公共団体の補助制度】
・東京都台東区 住宅修繕資金融資あっせん制度
・東京都目黒区 住宅リフォーム資金助成
・東京都品川区 住宅改善工事助成事業(エコ&バリアフリー住宅改修) など
介護や子育て、省エネなどの要件を満たせば屋根修理・リフォームの費用に対する補助が受けられる可能性があります。予算を考える前に国や地方公共団体のホームページなどで確認してみましょう。地方公共団体の補助制度については、「支援制度検索サイト」という、住んでいる自治体の制度が検索できる便利なサイトがあります。
参考
地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト(令和5年度版)
ただし、上記のとおり補助制度は災害等で被害を受けた場合の修理や、省エネ改修などを対象としています。経年劣化による修理・リフォームの補助は期待できません。
屋根修理、工事業者の探し方・選び方
屋根の修理業者は数多くあり、普段見えない部分の修理などは誤解や錯誤も起こりかねません。そんな中、修理業者を選ぶ際のポイントなどはあるのでしょうか。
複数社に見積もりを取るのはもちろん、業者の対応や実績なども確認してから判断するのが安心(画像/PIXTA)
相見積もりを取る
屋根修理・リフォームの会社を選ぶ時には、必ず相見積もりを取りましょう。会社によって見積金額が異なるため、複数社を比較することで相場が分かってきます。見積額の安さだけで判断せず、この後説明する「施工実績」などを確認することも大事です。
反対に、見積金額が極端に安い会社にも注意が必要です。工事中に”ほかにも問題が見つかった”などとして金額を上げてきたり、作業後に見積金額とは異なる法外な高額請求をしてきたりするなどの事例があります。
リフォーム会社によって、リフォーム費用は異なるので、複数の会社に見積もりを出してもらい比較検討するのはもちろんです。しかし、見積もりはしっかりとしていても、工事がずさんということもあるので、金額的な面だけで判断するのは避けた方がいいでしょう。
口コミを確認する
いくつか候補をピックアップしたら、各社の口コミを確認することも重要です。実際の利用者の声を知ることで、会社の対応や作業の丁寧さなどがチェックできます。
評判の悪い口コミが出てくる場合もありますが、法外な費用を提示された、作業後に別料金を請求されたなど、会社を見極めるときに役立つ情報を得られることもありますので、見積もりを依頼する前にチェックしておきましょう。
現地調査の丁寧さをチェックするる
現地調査の丁寧さも、屋根修理会社選びのポイントです。現地調査の担当者の対応がよく、しっかりヒアリングしてくれたり、わかりやすく解説してくれたりする会社は優良である可能性が高いと考えられます。写真を撮ってもらい、状況を確認できるかを聞いてみましょう。
屋根の状態は直接見ないとわからないことも少なくありません。確認もせず、見積もりを提示する会社よりも実際に屋根へ登って状態を確認してくれる会社のほうが、判断や対処方法も適切にアドバイスしてくれるでしょう。
施工実績を確認する
施工実績が多い会社も、それだけ多くの人に選ばれていて経験を積んでいるため、よい会社である可能性が高くなります。とくに自宅と似たようなケースの施工実績があると安心です。
会社を選ぶ判断材料のひとつとして、契約する前に、その会社の施工事例を確認させてもらうのがいいと思います。また、修理の後に修理内容を報告する施工完了報告書を出してくれたり、施工中の写真などを報告として共有してくれる会社もあるので、そういったフォローが手厚いかどうかも、信頼して任せられるかどうかの目安になるかもしれません。
必要以上に不安を煽る業者には注意する
屋根修理の業者選びで悩んでいる時に飛び込み営業があると、その会社に決めたくなるかもしれません。しかし、繰り返しますが見積もりは複数社からもらい比較することが重要です。
また、屋根が確認しにくい場所であることに乗じて不安を煽ったり、即決すれば大幅に値引きをするなどと告げたりして、強引に契約を結ぼうとしてきます。
その場ですぐに決めるのは避けて、相見積もりを嫌がらないか、知識が豊富でわかりやすく説明してくれるかなどをチェックしましょう。
【Q&A】屋根修理に関するよくある質問
瓦屋根やストレート屋根などの修理の目安は?
瓦屋根の耐用年数は50年前後、スレート屋根の耐用年数は15~20年前後です。しかし、長く使っていると瓦がずれたり色褪せたり、スレートが反ったりと不具合が出てくる場合があるので、いずれの素材も10~15年に1回を目安にメンテナンスするのがおすすめです。
ガルバリウム鋼板屋根の場合は、20~30年前後を目安にメンテナンスしましょう。
屋根の修理にかかる費用はいくら?
屋根修理の費用は、修理内容によって大きく異なります。修理内容別の費用の目安は以下のとおりです。(※カッコ内の3万円は、職人1日あたりの人件費や施工管理費などを考慮し、追加で必要と考えられるおおよその費用です。職人の人数が増えたり、工事日数が長くなったりする場合は、さらに増えます)
・塗装:1棟当たり30万~70万円
・葺き替え:1棟当たり100万~170万円・カバー工法:1棟当たり80万~150万円
・瓦部分補修:1枚当たり 3000~4000円(施工監理費として+3万円相当が必要)
・板金交換、貫板:1m当たり8000~1万円(施工監理費として+3万円)
・漆喰補修:1m当たり2000~3000円(施工監理費として+3万円)
・雨樋交換:角樋の場合1m当たり4100~4800円(別途金具・部品費用等が加算される)
※屋根勾配が緩ければ(4寸以下)脚立やはしごで済みます。(施工監理費として+3万円)
また、高所での作業になるため、多くの場合(急な勾配)に足場代が必要となります。足場の費用の目安は1平米当たり600~1000円ほどです。(急な勾配の場合 +3万円)
屋根の修理にどれくらいの日数がかかるのか?
屋根修理にかかる日数は作業内容によって異なりますが、8~16日間ほどで完了するのが一般的です。なお、実際の修理作業にかかる日数とは別に、足場の組み立て・解体に2日ほどかかることも含めて計算しましょう。(職人の下見、監理者の検査、雨天、強風などでは日程が延びます)
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